頑張った I さん
昨年の春に初診で来られたIさんは30代の体格の良い男性でした。来院の理由は歯がぼろぼろで咬むことができないという事で、今まで歯科治療恐怖症で怖くて歯科院へいけなかったそうです。いよいよ決心の末に、私どものところに来られたそうです。確かにIさんは歯科院が苦手らしく 口の中を拝見してるときにも 額には汗びっしょりでした。Iさんには失礼ですが 奥歯は残根状態で咬む歯がない状態でしたので、治療の方法を説明し、了解を得た後に まずは歯科院に慣れていただくために 歯のクリーニングを行いましたが、緊張と 恐怖の成果はやり汗びっしょりでした。次の治療の時には 残せない歯を抜くことを告げて初回の治療を終え、次回の来院を待ちました。Iさんは次の約束時間に送れず来ました。きっと一大決心で来た事と思います。残根の歯をまず一本づつ抜くこととしました、この時私は Iさんに麻酔は全く痛くないとお話して、細心の注意して行いました、ここでもし私の麻酔が痛ければ きっとその後の治療もできなかったぐらいIさんは緊張していたと思いました。無事に抜歯も終わりIさんには頑張りましたねとお話しすると 大変うれしそうな笑顔で答えていただきました。きっと十分でもほっとしたことと、歯科治療ができるという自信も、持ったのでしょう。しかし額にはあせがびっしょりでした。歯科治療恐怖症のIさんの治療は抜歯 根の治療 虫歯と全部の歯に及ぶものでした。治療を続けるうちに夏を向かえ 体の大きなIさんは治療には慣れてきたものの やはり汗びっしょりで、いつも治療室を後にしていきました。そんなことを続けてるうちにIさんも歯科治療に前向きになり 綺麗にして しっかり咬めるようになりたいと言う方向になって行きました、奥歯をほとんど抜歯したものですから ブリッジもできない状態でしたので 義歯で対応を考えていましたが、まだ30代の働き盛りの男性ですので 入れ歯は嫌だとの事でした。そこで私がインプラント治療のことを説明すると 是非それでということになりましたが、なんてったって 歯科治療恐怖症で何十年も歯科院へいけなかった方がインプラント治療は向かないだろうと思って 私も説明しなかったのですが なんとIさんは是非お願いしますとのことになりました。しかし残念なことに 上顎の一部にインプラントを行うほどの骨の厚みがなくて、インプラントは難しいよと話したら 他の方法はありませんかとのこと、なんて人は変わるのかと思いました。思案の末に骨の薄いところへは自家歯牙移植で対応し、ブリッジの土台としました。また骨のあるところへはインプラント治療を行う方法としました。
インプラント手術のときでしたが、緊張のあまりIさんは気分が悪くなりました、中止にしましょうと告げると、先生 頑張りますからお願いしますとIさんはいうのです。私は この患者さんは本当に変わろうとしてるのだなと思いました。そんなIさんの治療も昨年の暮れには全部終了しました。なんと歯科治療恐怖症で歯科院の前をうろうろしていた方がインプラント治療、歯牙移植まで含めた全顎治療をほぼ八ヶ月かけて一日も キャンセルせずにやり遂げました、すばらしいことだと思いました。もちろん一番喜んだのはIさん本人だと思います、なってたって歯科治療恐怖症を克服したのですから。私たちも 感謝されましたが、逆に 私はIさんから多くのものを教えていただいたように思いました。何時の時代も歯科治療は怖がられ 嫌われる行為だと思いますが、少しでも喜んでいただける患者さんに合えることで私たちも救われる という気持ちになりました。 こちらこそ感謝いたします。
2005年3月16日 5:29 PM カテゴリー: 院長報告